梅雨の晴れ間の鮮烈な陽射しです。
ここ数年、この時期を仙台と札幌ですごしていたので、このようにキッパリと夏に向かう陽射しは、本当に強烈で、そして気持ちのいいものと感じます。
今日告白する私の弱点は「お金のかかる医療を知らない」ということです。
私は、この3月まで自衛隊医官として勤務していましたが、実は自衛官は「医療費が無料」です。正確には、医療費相当分を均等負担で天引きされる(拠出している)ということですが、所詮、「出る財布と入る財布が違うお金」は誰も考えません。実態として、自衛官は、自衛隊病院や内部の医務室にかかる限り、どんな医療を受けても医療費は無料です。
また、一部の自衛隊病院は一般開放(一定の枠内)していますが、医務室は自衛隊員(自衛官や防衛省事務官など)のみが医療の対象ですし、病院においても扶養家族を診るものの主対象は自衛隊員です。そうなると、「ご本人が支払う医療費がどうなるのか?」という世間では当たり前の思考と縁のない世界で、医療施行者としてすごしてきたわけです。
さる4月1日にエミング千駄木クリニックを開院して、ゆっくりとですけれど着実に地域の皆さまに受け入れていただいています。ありがたいことです。
そんな中で、「健康保険による診療の枠組み」という新しい概念とも悪戦苦闘しながら(そのうちに、またブログに書きます)、何よりも来ていただいた方の利益になるような診療を心がけております。
ここまで書いたことと矛盾するようですが、どこかで「医療はpriceless」だと思っています。でも、保険点数で評価され、受診された患者さんはその費用を支払われる。開業医である以上、このことは忘れてはいけません。
先日も迷うことがありました。とある感染症があって抗生物質の投与が必要な方がおられました。内服が必要なのは絶対的な判断で、それは粛々と実施します。一方で、「今、点滴でも抗生物質を投与すれば、より早く楽になる」という考えに自ら迷いました。相手が自衛官であれば(こっちも、それなりの立場の自衛隊医官ですし)、まず間違いなく直ちに点滴していました。
で、そのときですが...
点滴した場合の時間と費用などを改めてご説明して、病態を再度確認の上、ご本人の選択を尊重しました。
もちろん、いずれの選択肢も「医学的に妥当な範囲内」であったからのことです。
でも、ベテランの開業医の先生は直ちに点滴開始したかな? などと考えてしまいました...
まだまだ新米開業医ですが、自分の弱点も理解した上で、せっかく来ていただいた方に、その費用と労力以上の福音をお持ち帰りいただきたいと励んでおります。そのために「提供する医療の質を向上させること」は、絶えず考える課題です。